ー ポリマルチ(ビニールマルチ)の使用について ー



ののま自然農園では今までポリマルチを使用していませんでしたが、2021年より使用することにしました。(冬越し春穫りの野菜は2020年秋からすでに使用しています。)

ポリマルチを知らない方もいると思うので、簡単に説明しておきます。
ポリマルチとは、土を覆うポリエチレンのフィルム資材のことです。
(ビニールマルチという言い方がわりと主流なのですが、素材はビニールではないので厳密にいうとビニールマルチという言い方は正しくありません。なのでここではポリマルチと言います。)
 
ポリマルチの例


何のためにポリマルチを土に張るかというと、以下のような目的があります。
・雑草が生えるのを防ぐ
・地温を上げて作物の生育を良くする
・地温の上がり過ぎを防いで作物の生育を良くする
・雨の跳ね返りを防ぎ、病気になるのを防ぐ
・雨で土壌の養分や土壌自体が流出するのを防ぐ
・土の水分を保つ
などなどです。
(ちなみに、地温を上げたり、上がり過ぎを防いだりと、逆の効果があるのは、マルチの色によって効果が違うためです。)

マルチの効果について詳しく説明すると長くなるので、ざっくりと、雑草が生えるのを抑えることと、作物の生育を助けることが目的、とご理解ください。

さてさて、こんなにも良い効果が得られるポリマルチですが、日光や雨風にさらされ続けるわけなので、当然劣化して長くは使い続けられません。1〜2作(1年ももたない)で処分するのが一般的です。
そのために、ポリマルチのゴミがたくさん出ます。
ゴミがたくさん出るのが嫌で、今までポリマルチを使っていませんでした。

ではなぜ今、ポリマルチの使用を決めたのか、長くなりますが、説明していきますのでよろしければお付き合いくださいませ。


《自然に寄り添う栽培は、草管理がとっても大変!》

畑や田んぼには雑草が生えます。これはみなさん想像がつくかと思います。
たとえ耕して草を全て埋め込んだとしても、土には無数の雑草の種が混ざっていますので、適度な水分と温度があればすぐにまた雑草が生えてきます。
野菜の種を蒔いても、放っておくとすぐに後から雑草が発芽し、野菜を追い越して雑草が茂ってしまうということは良くあります。
雑草というものはその土地でもう何十年(もしかしたら100年単位?)も生きているわけで、雑草にとってその土地はホームグラウンドです。住み慣れた土地なので生育も早い。新参者の野菜の種が、敵うわけがありません。
なので、人間が雑草を刈るなどの手助けをしないと、野菜は多くの場合は育ちません。そんなわけで、春〜夏の草の成長が早い季節の大半は草刈り作業となるわけです。




《手間のかかる農法に、持続可能性の限界が見えた》

ののま自然農園の農法は、このように手間のかかる農法ですが、環境負荷の少ない持続可能性の高い農法であるという考えのもと、今まで続けてきました。
しかし単に環境負荷が少ないだけでは「持続可能」とはならないことがわかりました。
「 環境負荷が少なく、必要な資源が持続的に得られること」が「持続可能」だと思っていましたが、それと同じくらい重要な要素があり、その考えが欠けていました。それは、

「続けていく人がいること」。
 
当たり前のことです。農業は人の営みですから、続けていく人がいなければ続いていきません。
とっても手間のかかる農法では、休みがなかなかとれす、休みが足りなければ体が持たず、続けられないのは明白です。

(農業は日が出ていない時間帯や雨が降った時などは仕事ができないじゃないかと思われる方もいるかと思いますが、部屋の中で苗を作ったり、種の管理をしたり、受注や問い合わせ対応をしたり、作付けの計画をしたりと、仕事は無限です。)

そしてたとえ自分が続けられたからといって、自分の次の人が続けられなければ持続可能とは言えません。
「こんな手間ばかりかかって休みも稼ぎも少ない農業だけど頑張ってやろうぜ!」なんて押し付けはしたくありませんでした。
休みもとれて稼ぎもある、それでいて栽培の楽しみや、達成感も味わえる。そんな農業をお手本として見せられれば、続けていく人も増える。
これが今ののま自然農園が目標とする持続可能な農業です。



《地域の農業を担っていく存在として》

初めはとっても小さな面積から始めたののま自然農園ですが、だんだんと農地の面積が増えて、2021年もさらに増える予定です。
農業を続ける中で、地域の人たちから信用される存在になったということと、農業をやめる人が増えたということがあるかと思います。
高齢の人が農業人口の多くを占めている現状を考えると、おそらくこの先も、耕作する人がいない農地というのが出てくると思います。
地主さんの気持ちとしては、代々続けてきた農地を自分の代で終わりにしてしまうことは非常に申し訳ないことなのです。だから「あんたがこの田んぼをやってくれたら助かる」というを言われることもあるのです。その時に、「大変だからこの田んぼはやることはできない」のか、「効率を良くする方法を考えてこの田んぼも借りる」のかの選択に迫られることになります。

環境負荷の少ない農業にこだわって、他の農地を放棄するのか、それとも多少環境負荷は多くなるけど他の農地も荒らさずに維持していくのか、なんとなくですが、後者の方が地域に必要な存在であるように思えました。
だから今後も、「やってくんねぇか」と言われたらできるかぎりその農地は引き受けます。
そして、ゆずれないこだわりは守り、余計なこだわりは削ぎ落とし、効率の良い方法を模索して借り受けた全ての農地を荒らさずに適切に管理できるようにしようという思いです。




《で、まとめると》

ポリマルチを使うように決めた理由ですが、まとめるとこんな感じです。

今以上の面積を適切に管理して営農する必要が出てきた。
それには手間を減らす必要がある。
除草は大変手間がかかる。
除草の手間を減らすためにポリマルチの使用を決めた。

以上です。ご理解くださいますと幸いです。




《最後に:生分解性マルチの使用について》

ポリマルチの使用を決めてもやはり、ゴミが出るということについては心苦しく思います。
ポリマルチのゴミ問題を軽減できる資材があります。それが「生分解性マルチ」です。
生分解性マルチは、微生物の力で二酸化炭素と水に分解されるマルチです。これを使えばプラスチックごみは出ません。ただし、主原料は土に還る成分ですが、それを薄いフィルム状にするために添加物が使われています。この添加物が土の中に残ってしまうと思うので、生分解性マルチを使うことを躊躇していました。
一方普通のポリマルチは、使用した後に全てはぎ取って処分してしまえば土の中に不純物が残ることはありません。ただし、うまくはぎ取って回収しないと破れて土の中に残ってしまうことがあります。

両者とも土の中に不純物が残ってしまう可能性があるわけです。
両者のメリット・デメリットを検討した結果、今後、生分解性マルチを使う可能性もあります。
結局のところ、生分解性マルチを使うかどうかは、定期的に野菜をとってくれているお客さんが、何を望んでいるか、によるかと思います。
生分解性マルチを使っても良いよ、という方ばかりなら使うし、使わないで、という人がいれば使わないし、お客さん次第です。
これについては皆様のご意見を伺いながら決めていこうと思います。

2021年1月4日記




《2022年追記:生分解性マルチを使用することにしました》

2022年夏の栽培より、生分解性マルチを使用することにしました。

ポリマルチは使用後に綺麗にはぎ取って回収することが難しく、丁寧に作業してもポリマルチのかけらが土の中に残ってしまうことがある、ということを実感したためです。
ポリマルチは、畝の裾の部分は土に埋まった状態にありますが、その部分に草が生え、根っこがマルチを貫通してしまうことが多々あります。その状況でマルチを剥がすのに引っ張ると、マルチが破れてしまうので、裾の部分をスコップで掘ってから丁寧に剥がします。
しかしそれでも、裾が破れてマルチの破片が見つからなくなる、ということもありました。(分解された??)
ポリマルチが土に残ってしまうことは避けがたいようです。

そのため、どうぜ土に残るなら、分解される生分解性マルチを使おうと思いました。

分解されるとはいえ、人工物を土に混ぜ込むことになるので、自然栽培としてはおかしい、という意見もあるかとは思います。
「自然栽培」には明確な定義や認証はありませんが、もし生分解性マルチを土に混ぜ込むのは自然栽培ではないという意見が多いようであれば、自然栽培という言い方はやめることにします。

無農薬・無肥料での農業を何年も続けて、持続可能性というものを考えた上での決断です。

また、これは余談になるかもしれませんが、数ヶ月前に腰を痛めました。(椎間板ヘルニア)
がむしゃらに働くことで営農が成り立っていましたが、それによって体を壊しては本当に虚しいばかりです。
体を壊すような働き方にならないためにも、省ける手間は省く。そのために生分解性マルチも使用します。

以上になります。ご理解くださいますと幸いです。

2022年9月4日記

About the owner

松崎裕一郎

私たちが丹精込めて育て、収穫し、みなさまのもとへお送りいたします。
【松崎裕一郎・1986年生まれ】
【松崎さおり・1987年生まれ】
千葉県君津市にて、2014年から、無農薬・無肥料(自然栽培)で田んぼと畑を営んでいます。
みなさまの健康と、豊かな食生活に貢献できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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